リー・チョンウェイのドーピング事件を振り返る

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豆知識
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2014年の11月、バドミントンファンにとって衝撃的なニュースが流れました。

「マレーシアのリー・チョンウェイがドーピング検査で陽性反応を出した」

陽性反応が出たことは事実だったようですが、リー・チョンウェイが意図的にドーピングを行ったわけでないと世界バドミントン連盟(BWF)が判断しています。リー・チョンウェイのファンという贔屓はありますが、彼のバドミントンへの貢献を鑑みるとドーピングを行うなど考えられないため、個人的にはこの判断は正しいものと今でも考えています。

今回の記事ではリー・チョンウェイのドーピング事件を元に、バドミントンのドーピングについて考えてみたいと思います。

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バドミントンのドーピング検査

そもそもドーピング検査って何?

アナボリック・ステロイドのような筋肉増強剤やアンフェタミンといった集中力を高めるような作用をもつ物質が世の中に存在しています。これらの物質を使うと、使っていない場合に比べて高いパフォーマンスを発揮できるようになってしまうため、これらの薬物は仕様が禁止されています。

禁止薬物を摂取したかどうかを調べるための検査がドーピング検査となります。

尿や血液を採取して、その中に禁止薬物を摂取した証拠が無いかを調べていきます。

バドミントンにおけるドーピング検査

バドミントンのドーピング検査は、国際試合なら世界アンチ・ドーピング機構(WADA)、国内試合ならば日本アンチ・ドーピング機構が行っています。この記事ではWADAがドーピング検査をしているものとして話を推めていきます。

WADAて規定されているドーピング検査の大まかな流れは

  • ドーピング検査の内容や責任について同意書を書く
  • 検体(尿)を入れる容器がいくつか渡されるので、そのうち使用する分を選ぶ(元の容器に薬物が混入させられているということを防ぐため)
  • 検査員の前で尿を採取する。尿が出ている所を隠したりできないようポーズなども決められている。
  • 容器と同様に、検査キットの容器を選ぶ。採取した尿をサンプルAとBに分けてキット容器に入れ、封をする。
  • WADAで検査が行われる。サンプルAがまず分析され、必要に応じてサンプルBの分析も行われる。

となっています。尿サンプルをすり替えるといった不正行為が出来ないように規定が細かく決められています。

WADAが出しているデータによると、2017年にバドミントン競技では合計で1372サンプルの検査が行われて、1件が陽性反応を示していたようです。バドミントン競技の場合、毎年1件前後の陽性反応があるみたいです。

陽性反応が出た場合、各協会から試合への出場停止や試合結果の取り消しなどの処置が取られることになります。

リー・チョンウェイ:ドーピング事件

ドーピング検査について簡単にまとめたところで、バドミントン界を揺るがしたドーピング事件について見ていきたいと思います。

ドーピング事件の始まり

2014年の10月、マレーシアのバドミントン選手からドーピング検査で陽性反応が出たことをマレーシアバドミントン協会(BAM)が発表します。

2014年8月にコペンハーゲンで行われた世界選手権で行われたドーピング検査で陽性反応が出たとBAMは述べていました。

10月の時点では、陽性反応を出した選手がドーピングをしていたかどうかは確定しておらず、BAMからもどの選手が問題だったのかも公表されていませんでした。検査の確定はサンプルBの結果待ちということになりました。

しかし、まだ確定ではなかったのにもかかわらず、リー・チョンウェイがドーピング検査で陽性反応だったという噂が広く信じられていました。

リー・チョンウェイにドーピング陽性判定

その後、11月に渦中のリー・チョンウェイは、妻のウォン・ミューチューと検体の分析が行われているノルウェー・オスロへと向かいます。サンプルBのドーピング検査の結果を見届けるためです。

そして11月5日、残念なことに、サンプルBからも禁止薬物の使用痕跡が見つかり、リー・チョンウェイのドーピングが確定することになってしまいました。

11月11日、BWFはリー・チョンウェイにドーピング検査違反で暫定的にワールドツアーへの出場を停止、公聴会の開催を命じました。

もしドーピング違反が意図的なものであるとしたら、約2年間の出場停止となり2016年のリオオリンピックへの出場は絶望的、現役引退となる可能性もありました。

さかのぼって8ヶ月の出場停止処分

公聴会の結果、「リー・チョンウェイのドーピングは意図的なものではない」として、2014年の世界選手権から8ヶ月の出場停止処分となりました。

ドーピング検査で検出された禁止薬物はデキサメタゾンと呼ばれるもので、抗炎症作用のほか集中力を高める効果があるものです。

このデキサメタゾンと呼ばれる物質を、リー・チョンウェイが意図的に摂取していたわけではなく、補助食品のカプセルに製造ラインのミスでデキサメタゾンが混入しており、それを知らずに摂取してしまったというのが公聴会の出した結論でした。

「意図的なドーピングでない」と判断されたため、ドーピング規則10.5.2により、出場停止処分が軽減され、2015年4月30日までの出場停止処分となりました。

脅威的な復活劇

2015年はオリンピック予選が既に始まっており、8ヶ月のブランクがあるリー・チョンウェイにとってはオリンピック出場は非常に厳しいものと考えられていました。

2015年も始めの頃は、2014年に稼いだポイントのおかげで世界ランキングも5位前後を維持していましたが、5月頃から世界ランキングが徐々に下がり始めます。

そんななか行われたスディルマンカップが、リー・チョンウェイ復帰後最初の試合となりました。

8ヶ月の試合ブランクがあるにもかかわらず、終始圧倒した試合内容ですよね。ファンの歓声も凄いです。

この時点で世界ランキングは48位まで落ちてしまっていますが、6月18日付けの世界ランキングで180位まで順位を下げてしまいます。

しかしスディルマンカップ後の6月下旬に行われたUSオープンで優勝を果たすと

8月には世界ランキング40位前後まで上昇し、ジャカルタで開催された世界選手権の決勝戦まで駒を進めます。対戦相手は2014年の世界選手権で敗れた中国のチェン・ロン。しかし、またしても決勝戦で敗戦し3度めの正直とはなりませんでした。

しかし11月上旬に開催された中国OPで、準決勝でリンダン、決勝でチェン・ロンにリベンジを果たし、2015年シーズンでスーパーシリーズプレミア大会を初制覇します。

最終的に、2015年末に発表された世界ランキングでは5位まで順位を上げています。半年足らずで175位も世界ランキングを上げたんですね。凄すぎてちょっとよくわかりませんね。

8ヶ月もの出場停止処分があったにもかかわらず、不屈の精神で戦い続け、自信3度めのオリンピック出場を果たした後は、皆さんが知っているとおりです。

意図しないドーピングの危険性

リー・チョンウェイに起きたドーピング事件と、そこからの復活劇をまとめました。

最後に、意図しないドーピングの危険性についてまとめたいと思います。

リー・チョンウェイが意図しないドーピングに陥ってしまったように、私達もそういったドーピングを起こしてしまう可能性は十分にあります。特に、将来日本代表になるようなジュニアのトップ選手には気をつけて欲しいと感じています。

仮に意図しないドーピングになってしまった場合、それが不慮の事故であることを証明するのは非常に難しいです。そのまま選手生命を立たれてしまう可能性もあります。なるべくそういったリスクは避けなければいけません。

意図しないドーピングとしてありうるのは、

  • 食べ物やサプリなどの製造ラインで禁止薬物が混入してしまい、それを知らずに摂取してしまう
  • 市販の風邪薬や病院で処方される薬などに禁止薬物が含まれており、それを摂取してしまう
  • 悪意ある第3者に、トレーニング中のドリンクや食事に禁止薬物を混ぜられてしまい、それを摂取してしまう

といった可能性が上げられます。

禁止薬物の混入した食べ物・サプリを摂取する

加工食品やプロテインなどのサプリメントが製造される段階で、禁止薬物が混入(コンタミ)してしまうことがあります。リー・チョンウェイのドーピング事件もこれが原因でした。

国内大手メーカーのDNSも2019年に混入事件を起こしています。

こういうロゴのプロテインを見たことある人もいるのではないでしょうか。

Amazon.co.jp

DNSはちゃんと検査を受けた工場で製造しているはずで、こういうことは起こりにくいと思っていたので衝撃的でした。国産だからといって安心してはいけませんね。

海外メーカーでもこういった混入事件は起きています。

薬に禁止薬物が含まれていることを知らずに摂取する

市販薬や病院で処方される薬には、ドーピングの禁止薬物に指定された成分が含まれていることがあります。薬自体が禁止薬物を含んでいることは違法ではありません。薬の成分が、アスリートにとって競技面でプラスの影響を与えるがために禁止されているだけです。

なので、「ちょっと風邪気味だし薬のも」と軽い気持ちで薬を飲むと、意図せずドーピングをしてしまうこともあります。

レスリングの吉田沙保里さんは、現役中はドーピングにならないよう市販の薬を飲んでいなかったというエピソードがあります。

アスリートはそれくらいシビアな世界で戦っているのです。

薬でドーピングにならないためには、「ドーピング機構で禁止されている物質が含まれていない薬を処方してください」とお医者さんにお願いすることが大切です。

悪意ある第3者に、禁止薬物を盛られる

カヌーの大会で、ある選手が別の選手のドリンクに禁止薬物を混ぜ、ドーピング検査で陽性反応がでるように妨害したという事件がありました。

バドミントンもこういった妨害がないとはいい切れません。特に海外だと何されるかわかりませんからね。不用意に自分の道具を放置したりはせず、自分の身は自分で守ることが必要です。

 

まとめ

今回の記事では、リー・チョンウェイのドーピング事件を題材にバドミントンのドーピング規則や、意図しないドーピングの危険性などについてまとめてみました。

管理人のように市民大会レベルでバドミントンを楽しんでいる人だと、あまりドーピングのことを考えることはありませんが、気をつけたいところです。全国レベルの選手は言わずもがなですね。

クリーンにバドミントンを楽しんでいきましょう。

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